人体60兆個の細胞は、血液が運んでくる水、栄養素、酸素、白血球、免疫物質などにより、養われている。よって、血液の流れが悪いところには病気が起きやすいし、病気の部分は、血液の流れをよくしてあげると、治癒が早まる。

血流が悪いということは何か原因があるということになる。

漢方では、「血の滞り」のことを「瘀血」というが、「瘀」とは「滞り」という意味である。「瘀血」を西洋医学的に解釈すると体の表面の静脈系の血行不順ということになる。

瘀血の症状は、次のようなものがある。

他覚症状

体表の血行が悪くなると、体表の血管が膨れてくる。よって赤ら顔、手掌紅斑(手のひらが赤い)、下肢の静脈瘤、胸部のくも状血管腫などの症状が表われやすくなる。

血の流れが滞り、毛細血管に血がうっ滞して、血管が膨れているのだから、少々の打撲でもすぐ出血しやすくなる。よって、アザ、鼻血、歯茎からの出血、痔出血(痔静脈のはれからの出血) が起こりやすい。

子宮筋腫も、大もとの原因は、漢方では瘀血と考える。よって、生理前に子宮内膜に血がうっ血してくると、子宮筋腫がさらに大きくなることが多いのである。
手掌紅斑やくも状血管腫が存在すると、西洋医学では慢性肝機能障害(慢性肝炎や肝硬変)と診断することが多いが、漢方では、慢性肝炎や肝硬変も、瘀血から生ずる病態のひとつと考える。

肝硬変のときは、食道静脈癌を合併し出血(吐血)することがある。食道静脈痛からの出血に限らず、肝臓で作られる血液凝固因子(タンパク質)の生成不足のために、全身のあらゆるところから出血しやすくなる。この事実を考えても、肝臓病は、瘀血の一病態と考えることができるのである。

さて、瘀血のあるときは、血管からの出血を伴いやすいが、逆に、血栓など血のかたまりを作ることもある。下肢にできる血栓性静脈炎を考えればすぐわかる。「瘀血」とは「血の滞り」をいうのであるから、血栓を作りやすくなるのも当然であろう。よって、日本人の主要な死因である心筋梗塞(冠動脈血栓症) や脳梗塞(脳血栓)も、瘀血の一病態と考えることができる。

西洋医学では、「出血」に対しては、止血剤= 血液凝固剤を、「血栓」に対しては、血栓溶解剤を使い、治療法は反対のものになるが、漢方では出血と血栓などの反対の病態に対しても、同じ駆瘀血剤を使う。

瘀血をよくする、つまり、血液をサラサラにする桂枝茯苓丸桃核承気湯当帰芍薬散、四物湯などの駆瘀血剤を使うのである。出血も血栓も、大もとの原因は同じ、すなわち、「血の滞り」と考えるからだ。

自覚症状

血液の循環が悪くなると、体の各臓器、細胞に、栄養、水、酸素、白血球、免疫物質、ホルモンなどが十分に供給されないのであるから、ありとあらゆる症状が出現してくる。肩こり、頭痛、めまい、耳鳴り、動悸、息切れ、神経痛、生理不順、生理痛、不眠、不安など諸々の不定愁訴である。
こうした不定愁訴は、「血の滞り」があり、ほうっておくと大病になるので、そうはさせまいと体が必死で叫んでいる姿なのかもしれない。